無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

そう決めて水族館の中に入ったら、意外と薄暗くてビックリ。

「きゃあ、見てみて! かわいい〜!」

いつもより何倍もテンション高めの穂波は、水槽に貼りつきながらどの魚たちを見ても歓喜の声を上げる。

その隣で西河が幸せそうに笑っているのを見て、ポワンと温かい気持ちになった。

ふたりはわたしの憧れで、やっぱりお似合いだなぁ。

ずっとそんなふうに笑っていてほしい。

「ねぇ、まだ未練あんの?」

「へっ……!?」

すぐそばに高瀬の顔があってハッとした。

水槽に反射した高瀬の表情は、なんだかとても切なげに見える。

「な、ないよ」

「ほんと?」

「うん……」

だって今は穂波の隣にいる西河より、高瀬のことが気になって仕方ないんだもん。

「手、繋いでいい?」

「だ、ダメ」

「あいつに見られるのが嫌だから?」

横にスーッと視線を流した高瀬の目が西河を捉える。

ダメだって言ったのに高瀬の手はすぐそばにあって、油断していたら指を絡め取られてしまった。

いとも簡単に繋がった手と手。

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