無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
女子の皆さんが大騒ぎするのもわかる。
カッコいいよね、高瀬のヤツ。
「あ、おいっ!」
「うわ、やっべ!」
なぜかコートの中の男子たちの視線が一斉にわたしの方に向けられた。
え?
こっちに飛んできているバスケットボール。
ビュンと強い勢いで、避ける間もなく目の前まで迫ってきたボールは……。
「きゃあ……っ!」
見事、わたしの顔面にぶち当たった。
「ちょっと環、大丈夫?」
「い、いた、い……っ」
最悪だよ、鼻がもげそう。
じんじんして、グワングワンして、脳が揺れてる。
ものすごい勢いだったもんな……。
「ぷっ、だっさーい……!」
「あれくらい避けれるよね?」
「かわいそう〜!」
あちこちからクスクス笑われて、肩が縮こまった。
恥ずかしすぎるよ……。
今すぐここから消えたい。
「た、環、鼻血出てる……!」
「へっ……!? うそっ」
そう言われて鼻のあたりを触るとヌメッとした血が手についた。
反対側の鼻からも、たらっと血が伝う感覚がして慌てて手で押さえる。
その結果あちこち血だらけになって、騒ぎに気づいた先生に保健室へ行くよう指示された。
「たまちゃん! 俺も行くよ!」