無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

授業が終わると真ん前の高瀬が光のごとくくるんと振り返った。

「俺が教えよっか?」

わたしの机にかじりつきながらの上目遣い。

「へっ……?」

いきなりなに?

「数学」

「え? え? 高瀬が?」

どういう風の吹き回し?

「だってこのままだと補習になっちゃうでしょ、たまちゃん」

「そ、そうだけど、失礼なっ!」

でもでも、高瀬が教えてくれるっていうならそれはとてもありがたいお話なわけで。

飛びつかないわけにはいかない。

「いいの? ほんとに?」

「いいよ。なんだか必死っぽいし。クリスマスに補習もね」

「ありがとう!」

これで一安心だよ。

とにかくめちゃくちゃがんばって、クリスマスを守る。

特に予定はないけれど、みんなが浮き足立つほどの特別感が好きだから。

高瀬は誰と過ごすんだろう。

いっぱいいるよね、一緒に過ごしたいって子。

願わくば、一緒に……。

なんて、無理無理。

誘えるわけない。

< 167 / 229 >

この作品をシェア

pagetop