無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

そして土曜日。

「はぁ、どうしよう」

変じゃないかな?

大丈夫だよね……?

緊張から心臓がバクバクして、昨日の夜はほとんど眠れなかった。

週末の土曜日、電車に乗ってやってきたのは高瀬が住むタワーマンションの前。

手ぐしで前髪を整えながら、スマホをインカメにした画面で身だしなみをチェックする。

お母さんが持たせてくれた手作りパウンドケーキが入った袋をしっかり握って、近くのコンビニで飲み物を買った。

い、いざ、出陣……!

オートロックの扱い方がわからなくてあたふたしていると、中からドアが開いた。

「おはよ、たまちゃん!」

軽い足取りでわたしの前まで走ってきた高瀬は、わたしの前で立ち止まる。

「おはよう、よくわかったね。わたしがきたって」

「そろそろくる頃かなと思って降りてきたんだ」

絶妙なタイミング。

スウェット姿の高瀬は、わたしを見てフニャッと破顔した。

今日クリスマス誘えたら誘ってみる。

勉強という名目の裏に、よこしまな気持ちもちょっぴりありつつ、緊張しながら高瀬の隣に立つ。

「さ、行こっか」

「う、うん……」

なぜか手を握られたけど、その理由を問うこともできず。

エレベーターに乗ると、ふたりきりの空間にさらに緊張感が増してきた。

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