無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
わたしだけ特別なんじゃないかって。
ずるいよ、そんなふうに言うなんて。
「まぁ、そんな緊張せずにさ。普通の家だからリラックスしてよ」
「うっ、ちょっと待って……」
ドアの取っ手を握る高瀬の手を無意識に引き止めた。
「とりあえずあと十秒待って」
「はいはい。十秒ね」
鼓動を落ち着かせるべく大きく息を吸い込む。
すると、高瀬がわたしの頭をポンポンっと撫でた。
「緊張ほぐれた?」
「う、全然」
っていうか、むしろ増したんですけど。
「ご、ご両親とか、いらっしゃるよね?」
「んー、いるけど気にしなくていいよ」
いやいや、気にするよ!
もうすでに十秒経った。
ガチガチに固まっていると、目の前のドアが中から開けられた。
開けたのはわたしでも高瀬でもない。
「あら、あらあらあら〜! いらっしゃい! 待ってたのよ〜!」
出てきたのはきれいすぎる高瀬のお母さん。
美人でスタイルがよくて、とてもとてもお母さんという年齢には見えない。
高瀬のお姉さんだと言われても通じるほど、若くて明るい人だった。
「は、初めましてっ! 上条環と申します! 高瀬クンとはお友達で……! こ、これ、うちの親からのパウンドョケーキです!」
うわぁ、噛んじゃった。
恥ずかしすぎる。
「うふふふ、嬉しいわぁ。ありがとうね。まさか、李音ちゃんがお友達を連れてきてくれるなんて夢みたい」
り、李音ちゃん……?