無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
高瀬、お母さんにちゃん付けで呼ばれてるんだ。
なんだか意外な発見!
「ちょ、その呼び方やめてっつってるじゃん」
高瀬はというと、嫌そうな顔でお母さんに向かって叫んでいる。
「うふふ、そうだったわね。うっかりうっかり。ささ、環ちゃん、上がってちょうだい。ちょうどクッキーが焼けたところなの」
「おい、母さん。なんか焦げ臭いぞ!」
部屋の奥から声が飛んでくる。
「あらやだ。うっかりオーブン切るの忘れてたわ〜! 環ちゃん、遠慮せずに上がってね〜!」
うっかりさんなのかな。
なんだかかわいらしいお母さん。
「お、お邪魔します……!」
ペコッと頭を下げたあと、玄関に入らせてもらった。
あらかじめ用意しておいてくれたらしいスリッパを履いて、リビングに通された。
うわぁ、広い。
リビングとダイニングだけでも四十畳はありそう。
キッチンもうちの何倍もあって広々としてるし、ガラス張りの窓からは景色が一望できる。
思わずキョロキョロしていると、高瀬に手を引かれた。
「父さん、俺の友達の環ちゃん」
「おー、そうかきみが! うちの李音と仲良くしてくれて、どうもありがとう!」
お父さんは高瀬と同じ笑顔でわたしに向かって微笑んでくれた。
「こ、こちらこそ、今日はお邪魔しちゃってすみませんっ!」