無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
はぁ、マジあっつ……っ。
自分の足音しか聞こえない。
走ってると無心になれるから、嫌いじゃないんだよな。
暑いのは嫌いだけどさ。
──ザッザッザッザッ
後ろで足音がしたかと思うと、すぐ横をふわふわ頭が追い抜いていった。
さっきよりもめちゃくちゃ腕を振っての猛ダッシュ。
フワッとした柔らかい髪が風になびいて揺れた瞬間、甘い香りが漂ってきた。
マジかよ、抜かれた。
俺、そんなにペース遅かった?
いや、上条サンががんばってんの?
颯爽と走っていく細くて華奢な背中を見つめながら、ふつふつと沸き起こる小さな闘争心。
負けたくねぇな。
女子相手になにムキになってんの、俺。
だけど負けたくない。
ペースを上げて上条サンの背中を追いかける。
体温がどんどん上昇して、焼かれてる気分。
もう少し、あと少し、一歩、いや二歩。
追い抜きかけたとき、大きく体が傾いた。
そのまま前のめりに倒れ込んで、体が地面に沈み込む。