無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

ゴクリ。

唾を飲み込み、本棚の隅からそっと顔を覗かせた。

あ、足?

足があるってことは、ユーレイじゃない……?

ホッ。

まさかそこに人がいるなんて思ってなかったわたしは、驚きと緊張で涙はいつの間にか引っ込んだ。

あ……。

ゆるく締まった赤いチェックのネクタイと腰で履いた深緑色のズボン。

フワッとした茶色い光沢のある髪は、どこか見覚えがある。

だらしなく本棚に持たれながら、こっちを見るその人は、同じクラスの高瀬(たかせ)李音(りおん)くん。

「ごめん、手が滑ってスマホ落とした」

高瀬くんは舌を出してかわいく笑った。

完全無欠の無気力王子。

ふんわりしている高瀬くんは、王子なんて呼ばれるほど整った顔をしている。

理知的で涼し気な目元に、シュッとした鼻筋。

顔だけだとクールな印象を与えるけど、いつもにっこりしてるから愛嬌がたっぷりで親しみやすい。

容姿だけではなく学年トップという肩書きまであって、運動もできるという。

おうちもお金持ちで御曹司だと囁かれているのを聞いたことがある。

< 7 / 229 >

この作品をシェア

pagetop