無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
やっぱり西河は西河だ。
その優しさにジーンとしちゃう。
こんなことされたら、余計好きになっちゃうよ。
会うとダメだ。
西河のいいところが目について離れなくなる。
サッカー部の友達とはしゃぐ西河は、見ない間に髪が伸びて大人っぽくなった。
用事もないのに西河たちのテーブルの前を行ったり来たり。
「ところでお前、穂波ちゃんとどうなの?」
「もうチューした?」
「いいよなぁ、穂波ちゃん。かわいいもんよ」
「お前ら、マジでうるさい」
騒がれていい気がしないのか、たしなめるような口調で西河は言った。
「いいよな、彼女持ちは。俺も穂波ちゃんみたいな彼女ほしー!」
「バーカ、お前には無理だ」
「そういや俺、陽太と穂波ちゃんがチューしてんのたまたま見たわ」
そんな言葉を背に、近くのテーブルを片付けていたわたしの手が止まる。
「この前体育館横でイチャイチャしてただろ? 学校内でイチャつくのは禁止でーす」
「うっわ、リアルに想像しちゃった。許せねー、陽太め」
「あーもう、ほんとに黙れ。うるさい」
「はは、真っ赤。陽太はすぐ顔に出るから、かわいいよな」
そのあと自分がどんなふうに接客をしたのか覚えていない。
あるのはどうしようもないほどの胸の痛みだけだった。