メーティスとホームズの子孫
シャーロックが玲奈のことをなぜ寄生虫学者だと見抜いたのか。あの時の推理に和香は驚いたことを今でも覚えている。

「彼女からは薬品の匂いが僅かだが漂っている。その薬品は寄生虫学者が貴重な生態を保存する時に使用するものだ。そこにいる男性と女性からも漂っている」

匂いなど和香には全くわからなかった。ジョンが「よく気付いたね。犬みたいだ」と言うと、シャーロックはジョンのおでこを指ではたいた。

「僕が犬なら君は食い意地が張っているだけのリスだな」

「ひどくない!?」

あの時のことを思い出し、和香はクスリと笑う。すると、「和香?今何か思い出さなかった?」とジョンに訊かれてしまった。慌てて「何でもないです」と答える。

そして、中に入った和香は豪華絢爛な調度品の置かれたパーティー会場に言葉を失う。宝石で装飾が施されているものまであった。

「素敵……」

和香がそう呟くと、シャーロックが和香の隣に立つ。その目線の先にはエメラルドの埋め込まれた巨大な鏡があった。
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