(短編)初恋オムライス
「そんな顔をしてちゃダメだな。ちょっと笑ってみて。


「え、あ、こうですか?」


ぎこちなく口角を上げてみせるけど、彼に首を振られてしまう。
彼は少し考え込むような仕草をする。さすがに呆れられているんだろうかと心配になった。
しばらくして、言いにくそうに口を開いた。


「この間みたいなオムライスを食べてニコニコしてたみたいに、自然な感じで笑ってみて」


うわー、意外に無茶振りするな。そんなの今できるわけないよ。


「えと、えと」


笑えと言われても、そんなに簡単に笑えるものじゃない。


「くるみちゃんてさ、どうしてこの店で働きたいと思ったの?」


「えっ、あのそれは、ここのオムライスが子供の頃から大好きで」


「うんうん、この店のオムライスのどこが好きなの?」
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