(短編)初恋オムライス
「あ、それは、玉子がフワフワで中のチキンライスが柔らかくて甘くて、一口食べただけで魔法にかかったみたいに幸せな気持ちになって」


私の貧困な語彙力じゃあの美味しさを伝えきれない。どうしたらあの嬉しさを伝えられるかな。


初めてこのお店でオムライスを食べたときのことを思い出して、自然と笑みが零れた。


「そうか。子供の頃、オムライスが美味しいからここによく食べに来てたの?」


「うん。それに、このお店の雰囲気もお子さんに喜んでもらえるサービスがあってアットホームで好きだったから。店員さんがみんな優しく接してくれて」


「そうだね。それから?」


あ。あれさっきまであんなに重苦しい気持ちだったのに、今は違う。


「ほら、笑顔になった。くるみちゃんその調子だよ」


彼は私を慈しむような眼差しで見ている。

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