後輩くんはワンコ時々オオカミ


「離して」


「やだ」


「なんで?」


「眞子先輩、小さくなったから
逸れたら困るでしょ?」


「それは、涼太が大きくなったからで
私は小さくなってないわよっ」


「ま、どっちにしても
離すつもりないんで」


首を傾けて顔を覗き込んでは
ニッコリ笑う涼太

クシャッと笑う姿は三年前に見た涼太そのままで

なんだか居心地良い感覚に笑ってしまった


「あ〜、なにが可笑しいんですか?」


「ん〜?なんか涼太が可愛いなって」


「は?可愛いのは眞子先輩でしょ?」


「私は可愛いくなんてないわよ?
涼太が可愛くて良かったわ」


「はいはい、じゃあそういうことにしてあげま〜す」


なんでもないお喋りの間に
気がつけば掴まれていた腕は離されて
その代わり手が繋がれていた

その大きな手に包まれているのも
全然嫌ではなくて

中学に上がり立ての小さな涼太が
膝とか肘とか擦りむいて絆創膏を貼るために
私が手を引いたこともあったよな〜なんて思い出に浸りながら

そのままスクールバスに乗り込んで
並んで座り

結局、終わらないお喋りに
涼太はうちのマンションまで送ってくれた


「いつ引越したんですか?」


駅前通りに建つマンションは
春休みに引っ越したばかりで

知ってるのは知夏だけだった


「春休みにね」


「そうなんですね」


「涼太、大丈夫?一人で帰れる?」


「眞子先輩!馬鹿にしてるでしょ
もう俺高校生ですよ?一人で帰れるに決まってるでしょ」


「あ〜そっかそっか、ごめん
小さい涼太のイメージが中々抜けないのよね〜」


「じゃあ眞子先輩の中の俺を
早めに成長させて貰うために
ちょくちょく会いましょうね〜」


そう言って笑う涼太は
やっぱりあの頃のままで


「そうだね」


あの頃の延長のように
お姉さん振って連絡先を交換した





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