後輩くんはワンコ時々オオカミ

ワンコ攻めてくる

翌朝


「おはようございます眞子先輩」


マンションのエントランスには笑顔の涼太が立っていた


「・・・おはよう、涼太」


どうしたの？って聞きたかったのに
ニッコリ笑った涼太を見てると

ま、いっかぁ〜って三年前の癖が出る

でも・・・やっぱり確実に涼太は成長している
そんな気にさせるのは


「鞄持ちましょうか？」


自分だって大きなエナメルバッグを持っているのに

私のことを気にかけてサラッと言い放つところなんて

昔の姿からは想像できないくらい大人びて見える所為

それに驚く私も、なんだか昨日から胸の辺りがザワザワしていて

初めての感覚に少々戸惑っていたりする


「眞子先輩？」


「・・・へ？」


急に現実に引き戻されると
ドアップの涼太の顔が至近距離にあって固まった


「どうかしましたか？」


「・・・・・・ううん」


息がかかるほど近い涼太との距離に
小さく頭を左右に振ってみたものの

急に忙しく動く心臓が
壊れるんじゃないかって心配になった


「熱？眞子先輩っ、顔が赤いっ」


大きく開かれた涼太の目は
私の表情を見ながら焦っているようで

前髪を払うと私のオデコに手を当てた
もう片方の手は自分のオデコに当てられていて

どうやら熱を測られている模様


「んーーーー、分かんないや」


首を傾げた涼太は
またグッと近づくと
今度はオデコ同士を当てた


「・・・・・・っ」


驚いて目を見開くと
まつ毛の触れる位置に見えた涼太の目は

心配そうに揺れていた