後輩くんはワンコ時々オオカミ


「へぇ〜そういうことかぁ」


自己完結させて何度も頷いた知夏は


「涼太、力を貸すよっ」


そう言ってブラックな笑顔を向けた


・・・怖っ

・・・力を貸すってナニ?


知夏がこの笑顔を見せる時は
何かを企んでいる時

最早、恐怖しか感じないんですけどーーーーっっ

狼狽る私に


「眞子先輩、バス来ましたよ」


涼太はサッと私の手から鞄を取ると
すかさず空いた手を繋いでバスへと乗り込んだ


「・・・え」


なんて早技

・・・っと、感心してる場合じゃないっ


「涼太、離して」


「ダーメ」


「皆んな見てるじゃ、ない?」


恥ずかしいやり取りに
どんどん語尾が消えそうに小さくなって

俯いてしまった


「眞子、詰めて」


そんな私に救世主・・・は現れず


「そうですよ、眞子先輩」


それに乗っかる涼太の顔が
ワンコに見えなくなった

なんか・・・変だよ?

手を繋がれたり

顔を覗き込まれたり

今までだってこんな場面に遭遇したことなんて

少ないけれどある

その時だってちゃんと冷静に対処してきたのに

なんでこうも乱されちゃうんだろう

頭の中が混乱している私の背後から


「キツイのよっ」


知夏の声がした途端


「キャッ」


バスが揺れて通路に立っていた私は
目の前に立つ涼太の胸に打つかった


「眞子先輩、大丈夫?」


「・・・う、ん」


目の前にある涼太のネクタイから視線が外せない


だって・・・


涼太に抱きしめられてる・・・っ







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