後輩くんはワンコ時々オオカミ
朝も昼も夕方もワンコ



「眞子〜、古崎君って子が呼んでるよ?」



お昼休み突入のチャイムがなって数分
教室の入り口でクラスメイト金本梓が声を上げた


「ワンコ登場〜」


茶化して笑う知夏の向こう側で
ひょっこり顔を出した涼太


「眞子先輩、お弁当一緒に食べましょ」


自分のお弁当を顔の高さまで上げて
クシャリと笑った涼太


「え・・・私、知夏と」

「涼太〜ナイスタイミング!
眞子!私用事があるから涼太と一緒に食べてねっ」


私の言葉に被せるように知夏が早口で誘いを受けた


「え?」


用事があるなんてひと言も言ってなかったのに


そう思った時にはお弁当の入ったバッグを持たされて
「ほら!行っといで」と背中を押されていた


「・・・え」


戸惑う私の手を繋ぐと
ニコニコとワンコ笑顔を見せる涼太

つられて笑う私もどうかと思うけれど

破壊力抜群の涼太の笑顔に
つられない人がいるなら会ってみたい

そんな可愛い涼太に手を引かれ

着いたのは
噴水近くのベンチだった


不味いじゃん


「えーっと、涼太?」


「はい?」


「此処・・・ね?」


「ん?」


「なんていうか・・・その・・・」


噴水を囲むベンチは
ランチタイムはカップル専用席になることを入学したての涼太は知らないはず


「あっちに行こうよ」


噴水近くじゃなくても
ベンチは沢山あって

まだ十分空いている

そう思ったのに


「ここで良いんですっ!」


そう言ってニコッと笑った涼太は
既にお弁当箱を出していて

今更変えられないかと
諦めて自分のお弁当箱を取り出した






< 22 / 79 >

この作品をシェア

pagetop