後輩くんはワンコ時々オオカミ
「ありがとうございます」
ニコニコ笑う涼太は
サッと立ち上がると私の手からドライヤーを取った
「・・・ん?」
「眞子先輩は俺が乾かしますね」
そう言う涼太に肩を押されて
ソファに座らされる
ターバンのように巻いていたタオルを取られると長い髪が落ちてきた
「眞子先輩の髪って綺麗ですよね」
「そぉ?」
「俺って癖っ毛だから憧れます」
「私は涼太の髪に憧れるよ?」
そう言ってお互いにクスっと笑う
なんだかこそばゆいような
形容し難い雰囲気に
ドライヤーの風と髪に触れる涼太の手が気になって仕方ない
「熱かったら言って下さいね」
小さく聞こえた涼太の声に
ひとつ頷くと目を閉じた
「はい、出来上がり」
ドライヤーが止まると
一瞬で静寂に包まれる
シンとした空間を破るように立ち上がると
「涼太、この後予定ある?」
「え?・・・特にないですけど」
「じゃあ晩御飯一緒に食べよう?」
「良いんですか?」
「うん、どうせ一人だし
涼太居たほうが寂しくないから」
「一人?」
「えっと、言って無かったよね?
うちの両親、転勤でアメリカなの」
「え?」
「去年の八月に向こうに行ってしまってね
今まで住んでたマンションが私一人じゃ広すぎるからって此処に越してきたの」
「そうだったんですね、知らなかった」
「安心して?料理は自信あるから
マズくはないと思うよ?」
右手で力こぶを作る真似をして
カウンターキッチンへと移動する
「何か手伝いましょうか?」
「いいの、涼太はお客様だから
座って待ってて?」
着いてこようとする涼太を止めた