後輩くんはワンコ時々オオカミ
「バ、バカッッ」
下校中の人集りの中で大声を上げるなんて
涼太、バカすぎる
あんなに騒ついていたのに
水を打ったような周りの状況に息を飲む
大勢の学生が足を止めてこちらを見ている
それだけで
薄れていた頬に熱が蘇り
恥ずかしくて
両サイドの髪で顔を隠すように
これでもかという程俯いた
「なんだ?いちゃついて」
「見せつけてくるよなー」
「アレ雨宮じゃねぇ?」
「古崎君よ」
「話題のカップル?」
「えー、狙ってたのにぃ」
耳が拾う声に益々顔があげられない
繋いだ手を外そうとするのに
涼太の大きな手はびくともしなくて
そんな焦る私に
「眞子先輩、外さないで」
涼太は少しショゲタ声を落とした
・・・・・・・・・ゔぅ
今の声なら
絶対耳が垂れているはず
頭を撫でてあげたいのに
この状況が邪魔をする
せめても・・・と外そうとしていた手から力を抜く
途端にギュッと握り直した涼太は
「サァ、帰りましょう」
自分のひと吠えで周りの視線を釘付けにしておいて
気にも留めない風で歩き始めた
つられて歩くしかない私は
やっぱり顔をあげられなくて
このままバスに乗るとか
拷問に近い
なんとか少しだけでも遅らせないかと策を考えるうちに
並んだ列の一番前になっていた
「・・・っ」