後輩くんはワンコ時々オオカミ




「はい」




悩むより先に唇は動いていた



手を取ったまま息を飲んだ涼太は
瞬きさえ忘れたように動かない


「・・・涼太?」


「・・・・・・・・・え」


「涼太?」


「・・・あ・・・はい」


「涼太?」


放心したままの涼太とやっと視線が絡んだと思った瞬間

イキナリ立ち上がるとガッツポーズで空へ向かって叫んだ


「シャーーーーーーーーッ」


「・・・っ」


「眞子先輩っっ」


息を荒くした涼太は
ベンチに座る私を見下ろすと


「一生大事にしますっ」


大袈裟なくらいのお辞儀をして
もう一度跪いた


・・・プロポーズみたいじゃん


好きだと気付いた相手から二度も跪かれて嫌な気はしなかった


「涼太」


「はいっ」


「お腹空いた」


「へ?」


「ブッ、フフフ」


「?」


ポカンと口を開けた涼太が可愛いくて

ワシャワシャと頭を撫でる


「ねぇ、アレ食べよっか」


涼太の背後を指差す


「ん?」


つられて指差す方向を振り返った涼太は


「はい」


とびきりの返事をした


サッと立ち上がると私の鞄も持って
空いた手はやっぱり私の手と繋ぐ


私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる涼太と

カラフルな旗が立つフードワゴンへと向かった









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