後輩くんはワンコ時々オオカミ
* * *
「・・・い、・・・先輩?
・・・眞子、先輩?」
心地良い低い声が耳に入ってきて
少しずつ意識が覚醒する
まだ閉じていたい気分を消すように
重い目蓋を開けた
「・・・ん」
すぐ近くに不安そうに揺れる涼太の瞳が見えて
胸がギュッと苦しくなった
そんな顔しないでと
手を持ち上げて頭を撫でる
「・・・っ」
「涼太、大丈夫?」
「・・・ったく、それは俺のセリフですよ?眞子先輩」
眉尻も耳も垂れて見えるから
堪らず吹き出す
「頭痛どうですか?」
「ん?・・・っと、治ってるみたい」
「良かった」
「今、何時?」
「今は16時半過ぎです」
「・・・へ?」
「放課後ですよ?」
「え?」
確か保健室へ来たのはお昼休みだったのに
午後の授業を飛ばす程寝てしまったことになる
「・・・うそ」
「体調悪かったんですよね
鞄は知夏先輩が持って来てくれてますからね
起き上がれるようになったら送って行きますよ」
鞄まで此処にあるということは
本当に夕方なのだろう
涼太の手を持って起き上がれば
カーテンの向こう側に見えた窓からは
西日が射し込んでいた
「保健室利用届は書いて出したから
このまま帰って良いことになってます」
当然のように私の鞄を持った涼太は
反対の手を繋いだ
「涼太、色々ありがとうね」
「ん?全然ですよ?
だって、眞子先輩は俺の彼女なんですから」
サラッと口にしながらも
見上げた涼太の耳は真っ赤になっていて
『彼女』って響きに頬を緩め
コクンとひとつ頷いた