後輩くんはワンコ時々オオカミ



「眞子?どうしたの?」


周りを囲むチームメイトと
キャプテンである知夏


「・・・なんか、変な音聞こえた」








* * *




その後の記憶は霞がかかったように曖昧で


顧問の先生の車に乗せられて
病院に行ったことと

入院したことだけ映像で頭の中に残っているだけ


気持ちが落ち着いたのは
手術も終わって

リハビリを始めた頃だった



あれ以来

あの身体の中から聞こえた音がトラウマになって
スポーツという名のつくことを避けている私

アキレス腱断裂から半年近く過ぎて
治療完了のお墨付きをもらった時にも

チームメイトは既に高校の練習に参加を始めていたけれど

踏み出せない私は戻ることより
離れることを選んだのだった



□□□



あれ以来帰宅部の私

知夏は相変わらずバスケットを続けてくれたし

二人の関係はそのままだった


知夏は一度も口にしたことはないけれど

本当は足が治れば復帰すると思っていたに違いない


それを拒んだのは弱い私自身で

両親も最後は諦めてくれた


たった一回の挫折なのに
動くことを拒んだ身体は


体育祭の実行委員になって
競技よりも裏方であることを選ぶ


「よっしゃ〜〜」


大きな雄叫びに意識を戻すと
後ろの席で飯田が


「雨宮〜、役員カップル誕生〜」


両手を広げて抱き着こうとしていた


「ば、馬鹿言うんじゃ、ないわよ」


咄嗟に席を立って後退りする


「お〜、照れちゃって」


口元を緩めた飯田が
うんうんと頷いていた


・・・?


意味不明の飯田を睨んでやる


「「「っっ!」」」


飯田を含めた
近くの男子がパッと目をそらした



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