後輩くんはワンコ時々オオカミ
ワンコはオオカミへ
「ねぇ、ねぇ彼女一人ぃ?」
涼太がミニスーパーへ入ってすぐ
ガードレールにもたれていた私の前に
初めて見るタイプの男子学生が立った
「チョー可愛いじゃん
僕ちんと遊びに行かない?」
・・・ナンパ?
これまでナンパなんてされたことがなくて
どう断って良いのか考える間にも
「ど〜したの?反応可愛いねぇ」
ドンドン間合いを詰められて
逃げたいのに背後は大通り
頼みの綱の涼太は高校生になったばかりだし
・・・困った
目の前のチャラ男君はどうやら桐葉学園の生徒みたい
胸に付く校章は桐葉のもので
でも・・・
私の通う第一高校とは違うネクタイに
“第三高校”なんだと理解する
・・・困った
頭をグルグル回る“困った”を止められない反応薄の私に
「ねぇ、こっち見てよ」
チャラ男君の手が顎に触れ
クイッと持ち上げられ強引に合わせられた視線
「・・・っ」
・・・やだ
・・・涼太
見知らぬ人に触れられた気持ち悪さで
身体に力が入った
「可愛いぃ〜震えちゃって〜」
顎から伝わる熱から逃れるように
俯いて目をギュッと閉じるだけで精一杯
逃げ出すことも
大声を出すことも出来ない自分が不甲斐なくて
鼻の奥がツンとしてジワリと目頭が熱くなる
・・・助けて・・・涼太
数分前まで繋がれていた右手を
ギュッと握った