後輩くんはワンコ時々オオカミ

「眞子っ」



涼太のことを想ったと同時に聞こえた声に
弾かれるように顔を上げれば


スッと目を細めて怖い顔をした涼太が駆け寄ってきて


「俺の彼女に触んなっ」


チャラ男君に向けて牙を剥いた

一触即発かと心配したのに


「・・・お？彼氏持ち？
ざーんねーーーーんっっ」


チャラ男君はそのスタイルを崩すことなく

緩い状態のままでヒラヒラと手を振り行ってしまった


ガードレールにもたれたまま
涼太を見上げて固まる私に

涼太は一瞬顔を歪ませると
一歩近づいて


「ごめん」


フワリと抱きしめてくれた


涼太の香りに包まれると
徐々に呼吸が落ち着いてきて
力の入っていた肩が下がる


それでも“平気”と言いたい口は開いてはくれなくて

涼太の腕の中で頭を左右に振るだけだった


「一緒に店へ入ればよかったのに
・・・・・・ごめんな」


背中に回された涼太の腕と
宥めるようにトントンとリズムを刻む大きな手


今が外だということも忘れて
涼太の制服をギュッと握った


「・・・涼太」


「ん？」


「ありがと」


「ん」


高校生になったばかりと年下扱いをしてしまった自分を呪いたいくらい


涼太はカッコ良かった


それに・・・


“眞子”って呼んでくれた


“俺の彼女に触んな”


いつものワンコ涼太と違って
頼もしくて嬉しかった


初めて見る“男”の涼太に
さっきまで震えていた身体が
少しずつ落ち着いてくるようだった