後輩くんはワンコ時々オオカミ
「帰りたい」
さっき触れられた頬が気持ち悪い
そこからの浸食を止めるために
シャワーだって浴びたいくらいだ
そんなことを考えていた私は
グイッと手を引かれてガードレールから離れた勢いのまま涼太の胸へとダイブする
・・・涼太、危ない
大荷物を持っているはずの涼太は
私の心配なんてなんでもない風に空いた左側へ私の肩を引き寄せると
マンションへと歩き始めた
いつも手を繋いで歩く歩道が
広く感じられるほどの密着に
心臓がギュッと苦しくなる
いつもは
『段差気をつけてください』とか
『後ろから自転車来ますよ』とか
ずっと気を配ってくれている涼太が
口を開かず真っ直ぐ前を向いて歩いていて
・・・なんだか寂しい
だからって涼太との距離が離れた感じはなくて
寧ろ・・・
ガッチリと守られている身体は
涼太の体温をもらっているようで安心感がある
可愛い涼太とばかり思っていたのに
今の涼太は頼もしくてカッコいい
マンションの部屋に着くと
荷物をリビングの床に落とした涼太に
スッポリと抱きしめられた
「・・・っ」
涼太の胸に付けた耳から入ってくるのは
少し早い鼓動で・・・
新太のことも、さっきのチャラ男君のことも
不安にさせてしまったことが分かる
不安な気持ちって・・・
自分に置き換えてみれば・・・
相手の気持ちが測れないことの表れで・・・
未だキチンと涼太へ気持ちを伝えていなかったことが頭を過った