ロンド ~壮馬

「壮君が ナッちゃんを選んで よかったわ。」


母に言われて 夏美は 驚いて母を見る。
 

「私なんか全然ダメ。お母様 買い被っています。」

夏美が 不安気な顔で言うと、
 

「“お母様”って嫌だわ。そんな風に 呼ばれたことないから。ピンとこないの。ナッちゃんも ママって呼んで。」


母は 的外れなことを言い 夏美は びっくりした顔をする。

父と壮馬は ケラケラ笑う。
 

「ママ ナッちゃん 驚いているよ。」


父の言葉に 夏美も苦笑する。
 


「私、幸せ過ぎて。夢見ているみたい。でも私 精一杯 頑張ります。」


夏美の中で 何かが動いた。


自分を 卑下するばかりではなく 壮馬の為に 努力をしようとする決意。


心が 前向きに開けてくる。
 


「大丈夫よ ナッちゃんなら。だって 私と同じ大学を 卒業しているんだもの。」


母は また 意外なことを言って 夏美を 驚かせる。
 

「えっ。そうなんですか。」

夏美は 初めて知った。

壮馬は 何も言わなかったから。
 


「そうよ。田舎から 合格するって 相当 努力したでしょう。私も同じよ。」


母は 少し得意気に微笑む。


夏美は すっかり両親に 心を許していた。

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