死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
「なにしてるの?」
唐突に背後から声がかかった。
ゆっくりと振り返って、フェンスの向こう側にいた人物に目を見開く。
「富丘くん⋯⋯なんで、ここに⋯⋯」
営業部で4つ年上の同期。
富丘真斗(とみおか まさと)くん。
ダークブラウンのサラサラの髪。シュッと通った鼻筋。薄情そうな薄い唇。
いつもはスーツ隠したすらりとした細身は、スウェットパンツに半袖のTシャツといったラフな格好で。
クールで無表情な端正な顔立ちは、珍しく目を見開いていて、動揺を隠せない様子。
それは、そうか。
切磋琢磨しながらも、営業部で支え合ってきた元同期がこんなことしてるんだから。
「⋯⋯死ぬつもり?」
富丘くんは私の質問には答えず、一歩前に出て、フェンスをカシャンと切なく揺らす。
こんなときに知り合いに会うなんて、ほんとツイてない。