死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
「――――」
「――死ぬつもりなの?」
キリッとした眉を寄せて、無言を貫く私に再び同じ事を聞く。
見たとおりだよ。
「⋯⋯そうだって言ったら⋯⋯なに?」
富丘くんみたいに、営業部のエースで、稀に見ぬ美貌を持っていて、無表情のくせに信頼が厚くて。
何もかもがうまくいって、全部持ってる人にはわからない。
自暴自棄になって冷たく返した途端。
フェンスからめいっぱい身を乗り出した彼は、瞬時に私の腕を捕らえた。
タッチの差で、避けられなかった。
「っ――!」
「そんなことしたって解決しない」
最悪だ。
こんなはずじゃないのに⋯⋯!
「やだっ、はなしてよ⋯⋯」
私の右手首を力強く拘束する逞しい手に、爪を立てて、反抗する。
傷ついて、痛がって、離せばいい。
こんなに惨めな姿、見られたくない。
なのに、富丘くんの顔色は一つも変わらなくて
「はなさない」
ギリギリと彼と私の皮膚の間に、指を押し込もうとしても。
痛いに違いないのに。
血管の浮き出た大きな手は、食らいつくかのように離してくれなかった。