死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
そして、富丘くんの頑な態度に、一瞬だけ気を緩めた瞬間
フェンス越しに両腕を取られ、彼の前まで引きずられるように寄せられた。
「解決はしないけど、いい提案がある」
身体を硬直させるほどの鋭い眼光で、富丘くんは私の動きを封じ込めた。
それはあまりにも真っ直ぐで、切実で、私の決意ですらとても太刀打ち出来ないほどだ。
ひんやりとした汗が背中を伝うなか、彼はさらに畳み掛ける。
「どうしても死にたいって言うなら⋯⋯僕の話し聞いてからでも遅くないんじゃない?」
なんでこの人は、こんなに私に構うんだろう。
そんな方法⋯⋯あるわけないのに。
あるわけないってわかってるのに⋯⋯
心のなかでそう自嘲しつつも、
「⋯⋯なら、教えてよ。富丘くん」
かすがりつくような声色で、私はいつのまにか彼の名前を呼んでいた。
私の心を、あっと動かすような提案があれば、教えて欲しい。
どうにか⋯⋯してよ。
なんとかして。
弱った心は、否応なしに彼にすがりつく事しかできなくて、いつの間にか私の気持ちは、シリアスな表情をする彼に飲み込まれていたのだった。