死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
僕にちょうだい
富丘くんが住んでいるのは、このビルの10階だった。
幸か不幸か、まさか、身投げしようとしていたビルに元同期の自宅があるなんて、誰が思うだろう。
『⋯⋯この下、うちだから、そこで話そう』
捕まってしまった私は、そのままエレベーターへと乗せられて。
タバコの香りをまとわせた富丘くんは、私の手を硬く繋いだまま、ふたつ下の階へ降りて、エレベーターから三つ目の“10−A”と書かれた扉を開く。
広いフロアにドアは3つ。
そこでようやく私は、結構格式の高いマンションの屋上に上がっていたことに気づいた。
「はいって」
「⋯⋯おじゃまします」
ロックを解除した彼は、まずは私を中にいれて。
はいったところでようやく手を開放した富丘くんは、真っ赤になった腕を見て、「ごめん」と顔を歪めて労り、そのまま私を20帖ほどのリビングに連れてゆく。