死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
「こんなに近くで、ずっと君を見てきた男だっているんだから」
それって⋯⋯
あまりにも不意打ちで、信じられなくて。
ぴたりと涙が止まった。
そして、涙のままにゆっくり振り向いた瞬間、富丘くんの睫毛が目の前にあって。
「死ぬくらいなら、その命⋯⋯僕にちょうだい?」
まるでスローモーションだった。
そうささやいた彼は、扇子のような睫毛を閉じ、端正な顔を傾けると、私の唇にキスを落としたのだった。
私はというと、映画のワンシーンでも見ているかのように近づいてくる漆黒の長い睫毛を眺めて、触れ合った温かさと、彼の静かな息遣いを感じていた。
タバコの味がするのに、甘いキス。
「んっ――」
いつも仕事でも私が困ってると、涼しい顔して助けてくれて
けれども、何を考えているのかわからない富丘くん。
そんな彼は、何度か私の唇に噛み付くようにキスを落としたあと、ゆっくりと顔を離した。
切れ長の澄み切った瞳に、目を真ん丸くしている私が映り込む。
「これが⋯⋯“いい案”」