死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
『解決はしないけど、いい提案がある』
さっき屋上で引き止めた彼の言葉を思い返す。
「と、みおかくん⋯⋯?」
キスが⋯⋯? ど、どういうこと?
口数の少ない彼から、その意図はまだ読み取れないけど。
でも、愛の告白であることくらいはわかる。
困惑のあまりポカンとしていると、しなやかな腕が背中に回ってきて
「言葉の通りだよ」
そのまま彼のティーシャツに、ギュッと顔を押し付けられる。
涙とぐしゃぐしゃになったファンデーションが、彼の服についちゃう⋯⋯と思いつつ、身体が言うことを聞かずもたれてしまった。
そして、混乱する私を置いてけぼりに、胸から心地よい低い声が響く。
「仕事の件だって、本当ならすぐにでも助けてあげたかった⋯⋯。なのに⋯⋯こんなことになって、力になれなくてごめん」
いつもトラブルにいち早く気づく彼は、今回だって加藤先生とのことに気づき何度も部長に担当替えを申し出てくれた。
「富丘くんのせいじゃないよ。いつも⋯⋯困ってることに気づいてくれてありがとう⋯⋯」
Tシャツに顔を埋めながら、戸惑いながらもモゴモゴつぶやくと
「⋯⋯気づくよ。十年⋯⋯君を見てきたから」
驚くべき事実が彼の胸から響いてきて、思わず顔を上げた。