死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】

十年⋯⋯?


四つ上の彼とは、十年前に同期入社して、同じ営業部への配属になった。

今までそんな素振り一度もなかったのに、端正な顔は少しだけ頬を染めている。


「⋯⋯もしかしてそれって⋯⋯」

「――入社してすぐからだよ。⋯⋯要領よく仕事をこなすのに、私生活ではお人好し。クズ男に利用されてるのも知らず、人一倍尽くして。気付いたら、金里さんを守りたいと思うようになっていた」


赤くなりながらも大真面目に、それも無表情で淡々と答える富丘くんの誠実さに、じわじわと私も頬が熱くなる。

もちろん、クズ男とは⋯⋯ヒロキのことで。

でも不思議と、大好きだったはずのヒロキがボロクソ言われたというのに、嫌な気はしなかった。


「もうずっと、僕は君しか見てないよ」


熱くなったのは、頬のはずなに。

目から再び、ポロポロと涙が頬を伝う。
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