死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】
「金里さんだから⋯⋯ここまで連れてきた。君が死にたいくらい傷ついてるのを利用して、どうにか手に入れようとしてる。僕はズルい男だよ」
そんな真っ直ぐな告白の方が、ずるい⋯⋯。
心がぐわんぐわんと揺さぶられて、裂けた溝に富丘くんの想いがじんわり染み渡る。
「死ぬくらいなら、君を僕にちょうだい。」
彼は再び言った。
涙をそのままに、富丘くんのサラサラの前髪から覗く澄んだ瞳を見つめていたら、骨張った長い指先が、スッと頬を撫でて涙を拭っていく。
こんなに真っ直ぐ、求めてもらったことなんてなかった。
いつも“愛してる”というのは私だけで、ヒロキからは、返って来ることはなかった。
ずっと一方通行の付き合いをしてきた私にとって、これほど甘い誘惑はない⋯⋯。
そして、彼は無理矢理連れてきたというけれども、私がここまでついてきたのは自分の意思でもある。
だから、考えるまでもないんだよ。
今はこの気持ちが何なのか分からなくても、彼を信頼する気持ちだけは本物だから。