死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】

この瞬間、社会人になってまで親の脛をかじるヒロキが、

なんで私と一緒にいたのかが分かった気がする。 


愛じゃない。

お金。


アパート見つかるまで、住まわしてくれないかなとか。

傷ついたから少しだけ抱きしめてもらえないかな、とか。

そんなのは私の甘ったるい考えだったみたいで。

聞く耳すら持たない彼は、今日の部長の姿と重なった。


10年も一緒にいたのに。


こんな簡単に、終わっちゃうの?

ここにも私の居場所はないの?


なら私は⋯⋯どこに手を伸ばせばいいの?


誰か⋯⋯教えて。


まるで傷ついた心を踏み潰すかのような態度を取った彼は、いとも簡単に私を外へと追い出した。


ドアが閉まる直前、楽しげにスマホを耳にした彼は、女のコに連絡してその子と一夜を過ごすに違いない。

私だけじゃないことはわかっていたけど、目の当たりにすると呼吸が出来なくなる。


それでも彼を失うのが怖くて、依存していたのは私。

これは自分が招いた結果でもある。


ヒロキの発した言葉が、消化されることなく脳内を駆け巡って、

身体の一部がもがれたように痛かった。



―――――――




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