エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「変えたいというなら、せめてリスケを……! 増えた開発工数分、スケジュールを伸ばしてもらうことはできないんですか……?」

「それを調整するのは部長だから、俺にはどうしようもない。知ってるだろ? 部長の事なかれ主義。相手を怒らせたくないから、なんでもイエスって言っちゃうんだ」

端から諦めているのだろう、千葉さんはがっくりと肩を落とす。

まっとうに交渉すればPIT側も取り合ってくれるのだろうけれど、部長に交渉する意思がないのであればどうしようもない。

今の企業は、昔ほど非人道的ではない。

下手なことをすれば、労働基準に違反していると簡単に訴えられてしまうからだ。

過労自殺などがメディアに取り正されている昨今、デリケートになっている企業は多い。

特に、PITのような大手企業であればあるほど、体裁を気にして、慎重な行動をとろうとする。

逆に、二次受け、三次受けとなる小企業には、モラルが浸透していない場合が多い。

仕事を受注できないことを恐れ、無茶をしようとするからだ。

大手企業はちょっとやそっとでは潰れないが、中小企業は脆弱である。少し仕事が減った程度で、倒産する可能性がある。

必死に踏ん張らなければならないという強迫観念が働く。
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