エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
『徹夜って、そんな身体で……!』

「ごめんなさい……どうしても抜けられなくて」

受話口から沈痛なため息が聞こえてくる。

『今日は仕方がないとしても、この先、休める当てはあるのか? まだ週のど真ん中だぞ? いつまでもこんなことを続けていたら、本当に過労で倒れる』

「……大袈裟ですよ。栄養ドリンク飲めば元気になります」

わざと明るく言ってごまかす。

そんなに簡単に倒れたりはしないはず。これまでたいした風邪もひかず、健康に生きてきたんだから。私、まだまだ二十代だし!

けれど、透佳くんは、そんな楽天的な考えには賛同してくれなかった。

『彩葉。人は寝なければ死ぬんだ』

ぞくりと震える。医者が『死ぬ』なんて、よっぽどのことがない限り口にしないだろう。

これは、よっぽどのことなの……?

「……明日の夜は、ちゃんと帰りますから」

まだまだ納得していない透佳くんを無理やりなだめ、電話を切った。
< 105 / 259 >

この作品をシェア

pagetop