エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「婚約者って、他の看護師たちの前では言わないほうがいいよ」

「え?」

「わかるでしょ? あの経歴とルックスで、医院長の息子とくれば、どうなるか。看護師たちはみんな玉の輿を狙ってるよ。君を蹴落としてでもその地位を奪いたいと思ってる」

蹴落とすだなんて物騒な。

とはいえ、彼がモテるであろうことは確かだ。マンションのコンシェルジュのお姉さんでさえ、彼が通るたびに目で追いかけているもの。

「自覚した方がいいよ。君が手を出した男が、どんな影響力を持っているか。現に――」

何かを言いかけたところで、透佳くんが診察室に入ってきた。

「勝手に進めるな。俺を呼べと言っただろう」

威圧的な透佳くんに、沢渡先生は態度をガラリと変え、従順そうな目を向ける。

「まだたいした話もしていませんよ。心電図の結果、異常なしって言っただけです」

沢渡先生はすかさず立ち上がり場所を譲った。透佳くんは診察椅子に座り、パソコンの画面に表示された検査結果を確認する。
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