エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「わ、私も、これが動悸ってやつなのか、半信半疑だったので! 胸がピクピクしていたので、しゃっくりの一種かなとも思って」

「それ、どれくらい前からなんだ」

「週の半ば……徹夜の後くらいからでしょうか」

「十中八九、原因は過労だろうな」

透佳くんは私から手を離すと、厳しい表情で手脚を組んだ。不機嫌な顔でソファにもたれる。

「もう少し詳しい検査をしてみなければ、はっきりと断言できないが。彩葉、今のお前は軽症だ。だが、これ以上無理を続ければ、この先、悪化していく一方だろう。一度悪くなってしまった心臓はもとには戻らない。これ以上悪化しないよう気をつけて、現状を維持させるしかないんだ」

キッと強い眼差しで私を睨む。

「ドクターストップだ。その働き方をどうにかしろ。手遅れになる前に」

ぐっと唇を引き結ぶ。

これまで、仕事に理解を示してくれていた透佳くん。身体を大切にして欲しいとは言っていたけれど、明確にどうしろと言われたことはなかった。

そんな彼が、とうとうドクターストップと言い出した。多分、これが彼の最終通告なのだろう。
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