エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「治る薬とか……ないんですか」

「発作を抑える薬ならある。だが、対処療法だ。根本的な治療ではない」

――悪くなってしまった心臓はもとには戻らない――

彼の言葉が重くのしかかる。

このまま無理をし続けたら、私はどうなってしまうのだろう。

当たり前のように動き続けている心臓が、いつか止まってしまう日がくるのだろうか……?

「彩葉。不整脈は様々な病気を誘発する。もしかしたら、他にも深刻な病気が隠れているかもしれない。軽く見ないでくれ」

膝の上の手を、彼にきゅっと握られる。

わかっている。彼は私を困らせようとして言っているわけではない。

私のことを真剣に考えてくれた上での結論なんだ。

医師として、そして、婚約者として。

「会社に、相談してみます……」

ご家族が心配されてますよって、権蔵さんには軽々しく言えたくせに。

自分が実践するのは、こんなに難しいだなんて。

「彩葉」

彼の腕が私の背中に回り、この身を優しく引き寄せる。

「透佳くん……?」
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