エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「今日は……心臓がドキドキして無理そうです」

「なら、彩葉の心臓がびっくりしてしまわない程度に触れさせてもらおうか」

なにそれ!? とぎょっと身構える。

触れるって、どこを? どういうふうに?

当然そんな疑問が湧き上がって来たのだけれど、怖くて口に出せない。

「シャワーを浴びてくる。先にベッドで待っていてくれるか?」

熱っぽい笑顔で頬に口づけを落とし、彼はリビングを出ていった。

ひとりソファに座ったまま、ポカンと彼の出ていったドアの先を見つめる。

ええと。彼の指示通りに、ベッドで待っている?

でもそれって、暗に『食べてください』って言ってるようなものだよね……。

いっそう心臓がバクバクしてきて、胸元を手で押さえる。

もしかしてこの動悸は、仕事の疲労というより、彼との同居が原因なんじゃないだろうか。そんな気がしてきた。

とりあえず冷蔵庫に向かい、ミネラルウォーターを飲んで心を落ち着かせる。

使ったコップを洗い、歯磨きをしようと洗面所へ向かった。

洗面所の隣は脱衣所になっており、そのさらに奥にはバスルーム。今彼はそこでシャワーを浴びている。

水が壁を叩くシャーッという音がわずかだが聞こえてきた。
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