エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「冗談じゃない! そんなワガママを言って、次の開発がうちに回ってこなかったらどうするつもりだ!」

「ワガママではありません。普通はこまめにスケジュールを調整していくものでしょう。だいたい部長が面倒くさがって毎回毎回『遅れはありません』なんて虚偽の報告しているからこんなことに――」

「黙れ! 仕事ひとつ回せないくせに生意気言いおって! 黙って大人しく言うことを聞け! クビになりたいのか!」

ガン! と大きな音が鳴り響いた。部長が近くの椅子を蹴り飛ばしたのだ。

一瞬で場が静まりかえる。

ゾッとして背筋に冷たい汗が流れた。誰もが部長の暴言に、そして暴挙に、腹を立てながらも、目を合わせぬようにうつむいた。

部長は私たちを見下ろし鼻で笑う。

「ワガママは私が定年退職を迎えてから言え。あと五年、私が退職金をもらえるまで、しっかり働いてもらうからな!」

私たちは、部長の退職金のために身を粉にして働いているわけじゃない。

誰もが怒りを感じ、ギリッと奥歯をかみしめていると。

沈黙を破ったのは、意外なところから上がった声だった。

「ずいぶんな言い草じゃありませんか、部長」

声はずっと後ろ、部屋の入口近くから発せられた。私たちはその声の主へ目を向ける。
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