エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「残念ですが、今日は出社したわけではないんですよ。社長と部長に折り入ってお話があって」

「お話?」

部長がムッと顔をしかめる。

対して、権蔵さんはいつもののんびりとした口調で、朗らかに笑みを浮かべている。

この状況でその笑顔、底知れないものを感じとって、ゾッと肌が粟立った。

「紹介が遅れてすみませんね。こちら、私の主治医の須皇先生です。先生に助言をいただいて、労災の申請をさせていただこうと思いまして」

「労災、だと?」

部長の表情が凍る。すかさず透佳くんが前に歩み出て、優雅に会釈した。

その所作は、まるで権蔵さんに付き従う執事のように礼儀正しく謙虚。

しかし、顔を上げてみると眼差しは鋭利で、相手を射竦めてしまうほどの圧力を持っていた。

「彼は心筋梗塞で緊急手術を行わなければ命を落とす状態でした。聞けば、発症直前の時間外労働はひと月あたり百時間超。しかも、その状態が定常化していたそうではありませんか。労災と認定されるには充分でしょう」

透佳くんの言葉に誰もが息を呑んだ。

権蔵さんは、その説明にのんびりとした口調でつけ加える。
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