エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「須皇先生には優秀な弁護士のお友達がおられるそうで。彼らに協力を頼んで、労働基準監督署に労災の申請と、労働環境の調査、ご指導をお願いしようと思っています」

「労働基準監督署だと……?」

部長は怖くもなんともないという顔で嫌味な笑みを浮かべた。

労働基準監督署とはそもそも、悪を罰するような高潔な機関ではない。

労働時間だって隠蔽すればどうとでもなるし、そんな対策、始めから折り込み済みだろう。

しかし、そんな部長の態度も想定済みとばかりに、透佳くんは冷ややかな笑みを浮かべる。

「……ですが、是正勧告が成されたところで、サービス残業が増えるだけ。根本的な解決にはならないでしょう。それだけでは、この会社の労働環境を本当の意味で改善することにはなりません」

ぴくりと部長の肩が震える。権蔵さんが、にこやかに透佳くんの話の続きをする。

「ですので、これまでの残業代未払い、及び、数々のパワハラ発言を訴えさせていただくことにしました。訴える先は、もちろん、この会社。それから、株式会社PIT」

「なっ……!」

PITの名前が出た途端、部長の顔色が変わる。
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