エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「どうしてPITが関係ある!」

「なぜって。契約範囲を逸脱した無理な条件を課したからです。こうなった原因はPIT側の無茶な要求にある。違いますか?」

違う。権蔵さんもわかっていて、あえて茶番を演じているのだろう。

確かに仕事を受注した相手はPITであるが、そもそも、PIT側はこちらの労働環境を知らない。

部長の『大丈夫ですよ』という虚偽の申告を聞いて、都度適切な要求をしているに過ぎない。

悪いのは、勝手に無茶をしようとした部長だ。

PITが権蔵さんに訴えられれば、当然「一体どうなっているんですか!」という追及がうちの会社にくるだろう。管理責任が問われ、信用問題に発展する。

自分の会社が訴えられて損害賠償責任を負わされるより、重要取引先の信頼を失うほうがよっぽど手痛い。

つまり権蔵さんは、PITにすべてを暴露することで、部長を、ひいては見て見ぬ振りをする社長を、潰しにかかったのだ。

「なお、先ほどのパワハラ発言は、録音させていただきました」

透佳くんがポケットからICレコーダーを取り出す。

ボタンを押すと、ノイズのかかった部長の声が再生された。
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