エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「それと、加藤さんから伝言だ」

「伝言、ですか?」

私は目を丸くする。透佳くんがニヤリと口の端を跳ね上げた。

「『旦那を大事にしなさい』と」

カァァッと顔が熱くなる。つまり、透佳くんとお幸せにってことだろう。

それから、もっとプライベートを大事にしなさいというアドバイスかもしれない。

「彩葉は、まだしばらく今の仕事を続けるつもりか?」

「今の案件が片付くまでは。そのあとは……転職を考えてみるのもいいかもしれませんね」

この機会に、自分の身の振り方を考えてみるのもいいかもしれない。

就職した当初は、家にお金を入れることを第一に考えていたけれど、実家の経営が落ち着いた今、お金より透佳くんとの時間を大切にできる仕事がいい。

それから、透佳くんとの子どものこととか……。

ベッドの上でのやり取りを思い出して、赤面する。透佳くんは子どもが欲しいって言っていたっけ……。

ちらりと彼の様子をうかがえば、私のやましい心なんて知るよしもなく、爽やかな笑顔を浮かべていた。

「せっかくだ、好きなことを仕事にすればいい。彩葉は将来、お花屋さんになるのが夢だったんじゃないのか?」

「それ、幼稚園の頃の夢ですよ」

思わず笑ってしまった。彼の中では、将来の夢も幼い頃のままらしい。

だが、透佳くんは「それでいい」と言う。
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