エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「俺が海外へ行っている間にすまない。苦労をかけてしまったな」

「……それは、透佳くんが謝ることではありません」

「彩葉の両親に頼まれた。これからは、たくさん甘やかしてやってくれと」

やっぱりそうかと納得して、ソファの上にすとんと腰を落とす。

両親は、私を無理に働かせたと思っているのだろうか。

家にお金がなかったせいで、好きな学校にも行かせてやれなかったと罪の意識を感じているのかもしれない。

「今からでも遅くない。彩葉のやりたいことをやって、失った時間を取り戻してくれ」

真剣な眼差しで、きゅっと私の手を握る。

けれど、そうじゃない。私はゆっくりとかぶりを振った。

私は決して、この道を進んだことを後悔していないし、誰かを恨んだこともない。

「失っただなんて、考えたことはありません」

これまでの時間が間違いだったとは思っていない。

そりゃあつらいこともあったけれど、生きていくために必要な勉強だった。

無駄なことなんてない。ましてや、失ってなんかいない。

「学んだことはたくさんあったし、素敵な出会いもありました。時間を無駄にしただなんて、思っていませんよ」
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