エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
私を育ててくれる人も、守ってくれる人もいた。

権蔵さんや千葉さん、これまで一緒に過ごしてきた人たちとの出会いを思い返し、それらは必要なことだったと実感する。

「……悪い。これまでの彩葉の努力を否定するようなことを言って」

透佳くんは私の手を離し、きまりが悪そうに目線を漂わす。

そんな彼の手を握り直し、私は「いいえ」と笑いかけた。

「透佳くんの気持ち、すごく嬉しいです。今の私にできることを少しずつやっていこうと思います」

集めてくれたパンフレットの中から一冊を手にとり、パラパラめくる。

女性が生き生きとフラワーアレンジメントをしている写真が目に入った。

考えてもみなかった職業だ。でも、なんだかすごく楽しそう。

「お花にたくさん囲まれてお仕事をするのもいいですね」

今までは会社を辞めること、それも異業種への転職なんて、考えもしなかったけれど。

やる気さえあれば、なんだってできるんだ。まるで、これからの人生が可能性の塊みたいに感じられた。

「まずはやってみればいい。向き不向きはやってみなければわからないだろう」

「だったら、学校に通うよりもまず、関連する仕事に就いてみたほうが早いかもしれませんね。それから資格の勉強をしてもいいし」
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