エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
無収入の学生に戻るのはちょっぴり気が引ける。

きっと透佳くんは援助すると言ってくれるだろうけれど、私はもう二十六歳のいい大人だし、頼り切るのもちょっと……。

好きなことをするからには、働きながら勉強をするほうが現実的だろう。

学費については、これまで働いて貯めたお金でなんとかなりそうだ。

「仕事と勉強の両立を考えているのか? 彩葉は本当に、自分を苦境に置きたがるな」

「逆境を乗り越えてこその人生です」

「ずいぶんとたくましく育ったな……」

呆れたように透佳くんは言う。

「無茶はしないように気をつけますから」

もしかして反対なのだろうか。じっと彼の顔を覗き込むと。

「倒れない限りは応援する。……もっと頼ってくれてかまわないんだがな」

困った顔で私の頭をくしゃくしゃ撫でる。

どうやら透佳くんには、頼られている自覚があまりないようだ。もう充分に頼り切っているというのに。

どれだけ甘やかせば気が済むのか、過保護っぷりに苦笑してしまった。
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