エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「朝のお散歩って、なんだか清々しくていいですね」

透佳くんとふたり、のんびり当てもなく歩くのも初めてで、新鮮な気分だ。

「時間に縛られずぶらぶら歩くのは、いつぶりだろうな」

ふと仰ぎ見れば青い空に緑の木々。草木の香りに、鳥の声。こんな贅沢な時間は久しぶりだ。

「透佳くんは、以前にもこの場所に来たことがあるんですか?」

ここまで案内してくれたのは透佳くんだ。てっきり知っていたのかと思いきや、彼は「いや」と首を横に振る。

「身体を動かすにしても、ひとりだったらジムで済ませる。こういうのは、パートナーがいるから楽しいんじゃないのか?」

そう言って、身体の横でぶらぶらとしていた私の左手に触れた。指の間に指を滑り込ませ、きゅっと握る。

驚いて彼を見上げると、困ったように笑われてしまった。

「……まだ慣れていないのか? ふたりで暮らし始めて、もう一カ月以上経つぞ?」

彼の中で私たちは、手を繋いで歩いて当然の関係らしい。

かくいう私も、さすがに気持ちの整理がついてきた。もう、以前のように抗ったり、心を乱したりはしない。
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