エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「慣れてきた、というか……」

この一カ月、振り返れば彼に助けられてばかりだった。

最初の頃は、仕事が忙しくてとにかく疲れていた。

ストレスと過労で寝付けなくなっていた私をそっと抱きしめ、眠らせてくれた彼。

医者として、婚約者として、私のそばで身体を気遣ってくれた。

それから、時間のあるときには夕食を作ってくれて。

ご飯料理は苦手らしく、麺類、とくにパスタばかりだったけれど。

私の体の調子や好き嫌いを考えて、メニューを組み立ててくれたのが嬉しかった。

仕事に関しても、ひどい労働環境に解決の糸口を見つけてくれたのは彼だ。

真剣に将来を考え始めた私に、「なんだってやってみればいい」と背中を押してくれた。

「心の準備が、整ったというか……」

いまだにわからないのは、どうして彼が私を選んでくれたのかということ。

だが、その謎が解けずとも、彼が優しいことには変わりない。私のことを大切にしてくれているのは、紛れもない事実。

それだけで、結婚を決意するには充分だろう。

「……私、透佳くんと結婚したいかもしれません……」

ぽつりと呟いたひと言に、透佳くんの足が止まる。

驚いて隣を見れば、彼は大きく目を見開いて呆然と立ち尽くしていた。
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